困りごとの個別指導について主な事例をご紹介します。

なお、年齢ごとにも個別指導例を入れており、以下についてはリンク先をご参照お願いします。

以降は、以下の課題について触れます。

課題11:気持ちの切り替えが難しい

5歳になった息子は気持ちや行動の切り替えが苦手。
「お出かけするよ」と言っても「やだ!今遊んでるの!」となかなか気持ちの切り替えができず、保育園でも同じようなことが多く、先生を困らせてしまい悩んでいる。

療育例11

見通しを立ててあげること、気持ちを切り替える準備時間をつくることからはじめます。

原因分析

気持ちや行動の切り替えが苦手というお子さまは、見通しを立てるのが苦手・感情のコントロールが苦手・環境の変化や急なスケジュール変更が苦手といったことが原因となることが考えられます。

また原因は1つだけでなく、複数の原因が絡み合っていることもありますので、お子さまの様子をしっかりと見て適切なサポートをしていきます。

事前に見通しを立てる

これからどのようなスケジュールになっているかを事前に伝え、見通しを立ててあげます。

口頭で伝えるだけでは、覚えられなかったり、忘れたときに確認ができないので紙に文字や絵などお子さまに伝わりやすい表現を用いて提示させて頂きます。

切り替えの難しさが見られたときに、「こういう予定だったよね」と事前に共有したスケジュール表を見せることにより、納得できるように練習していきます。

終了前に予告して心の準備をさせる

プログラムの開始前に、終了の時間を決めます。

プログラムの終了時間の少し前に、「あと○分(回)だよ」と予告し、次の活動へ移る心の準備をできるようにします。この方法は遊びの中にも取り入れることができます。「○回したら友だちにゆずろうね」と最初に約束し、終了前に「あと△回したら終わり」と終了予告をします。

ご家庭でも「今日は○○するよ」とその日の見通しを、お子さまが分かるように伝えてあげて頂くようアドバイスします。

活動中も「あと○回だよ」と細かく見通しを立てて、活動終了時に、お子さまがグズってしまっても怒らないよう気をつけまるよう心がけるように保護者の方にお声がけさせて頂きます。

お子さまの気持ちを代弁してあげることで、気持ちが整理される効果もあります。お子さまの気持ちに寄り添ってあげることも大切です。

お子さまの成長例

遊びの時間からの切り替えができず、1人で遊び続けてしまっていたお子さま。

事前に見通しを立てることや終了前の声かけに慣れてくると声かけをしなくても、スケジュール通りに動けるようになります。遊びの時間から勉強の時間への切り替えもスムーズにできるようになっていきました。

課題12:落ち着きがない

5歳の息子が落ち着きがなく、幼稚園でみんなでお遊戯や歌を歌う時間に1人で動き回ってしまったり、他のものが気になって遊びだしたりしてしまう。
他の子はちゃんとできているのに、どうして息子はできないのかと悩んでいます。

療育例12

集中できる環境を整え、今やることを視覚的にわかるように提示します

原因・分析

周囲の音や、視界に入るものに対して敏感で、そちらに気を取られてしまっていることが考えられます。

注意を引くような要因を減らして集中できる環境を整えます。また、絵や音を使って、注目すべき物や人がお子さまにとって分かりやすくなるような工夫をしていきます。

集中できる環境に整える

お子さまが落ち着きを無くしてしまう要因を見つけ、その要因を取り除いてあげます。

お子さまの関心のあるものが、活動中に視界に入らないようにします。お子さまの座る位置を工夫する、おもちゃなど興味のあるものを隠すなど、活動に集中できる環境に整えてあげます。

音声・視覚で今やることを提示

「椅子に座る」や「今何する時間」など、ホワイトボードに文字やイラストでヒントをだしたり、声かけをすることでみんなと一緒に勉強できる場面を増やします。

集団参加ができたときに褒めてあげることで「周囲と一緒に行動することの大切さ」を意識してもらいます。

食事や身支度など、集中してほしい時には、テレビを消す / おもちゃを見えないところにしまうなど、環境を整えるよう保護者の方へお声掛けさせて頂きます。

お子さまの成長例

落ち着きがなく集団の中で指示を聞くことが苦手だったお子さま。

個別に声かけや視覚的な補助が必要でしたが、次第に集団の中でも今やるべきことは何かを理解できるようになり、自発的に課題に取り組むようになりました。 

課題13:運動が苦手、手先が不器用

5歳になる息子ですが、運動だけでなく手先を動かすことが苦手なようです。ダンスではみんなについていけず、1人で棒立ちになってしまい、工作ではみんなと同じようにできずに途中で諦めてしまい、悩んでいる。

療育例13

1つずつ、階段を上るように小さいステップを設けて取り組みます

原因・分析

発達に遅れのあるお子さまの中には、自分の体や手先を動かすイメージがつかみにくいことが原因として考えられます。

「手先を使った細かい作業」や「ダンスの振り付けが覚えられない」というケースが多く見られます。

お子さまがやる気をなくしてしまわないように、取り組む課題を小さな活動に分解し、少しずつ課題を克服していくように練習します。

手の操作から細かい指の動かし方を習得

ハサミを使うには、まず三指の操作の前に手の全体を使って、握ったり閉じたりの操作を練習します。

お子さまでも持てる小さなトングを用意し、ままごとのリンゴなどの大きいものを掴んで離す活動をおこない、手を開いたり閉じたりするスキルを獲得します。手の操作がわかると、細かい指の動きがわかり、複雑な工作活動へと進みます。

見て覚えて身体を動かす

色の違うラダー(縄梯子のようなもの)を用意し、スタートとゴールの位置を決め、お子さまには「先生が通ってきた順番でついてきてね」と伝えます。

指導員が歩いたラダーの順番を見て、自分が動かなければいけない場所を記憶しながら身体を動かす練習をします。見て覚え、その通りに身体を動かすスキルを獲得し、次に音楽をつけた動きへと進みます。

お子さまを見ているとつい手を貸してあげたくなると思いますが、お子さまのペースで1つずつできることを増やしていくことが、お子さまの自信につながります。お子さまの苦手を認め、1つ課題をクリアするごとにしっかりと褒めてあげて頂くよう保護者へお声掛けさせて頂きます。

お子さまの成長例

手先が不器用でみんなと同じことができずやる気を失いかけていたお子さま。

小さくステップを踏み、小さな課題から少しずつクリアしていくことで人より少し時間はかかっても、みんなと同じものを作り上げることができるようになります。そのことがお子さまの自信にもつながり、今まで以上に色々なことに積極的に取り組む姿勢が見られるようになってきました。

課題14:文字が書けない

手先を使い、文字を書くことが苦手。
幼稚園・保育園で、のりやはさみ、テープなどの道具を使った複雑な工作も、思ったようにできない状態に、子どもが自信を失っているようで悩んでいる。

療育例14

当教室では、お子さまが複雑な課題に取り組む場合は小さいステップに区切って対応していくことを推奨しています。
何が原因でできないのかを明らかにし、できるまでひとつずつ順にステップを積み重ねることで「できない」を少しずつ「できた」に変えていきます。

当教室での療育

お子さまがたくさんの「できた!」喜びを感じ、意欲を向上させるために、ひとつの行動も細分化した課題にして、細かな成功体験を積み重ねます。

例えばはさみの使い方。初めははさみの動かし方、次は紙の動かし方、直線で切る練習などスモールステップを作ることで、成功のしやすさ、達成感の醸成と同時に、はさみを使うスキルを獲得していきます。

また、スポット授業で集団指導を受講し、マンツーマンで練習したことを試す場として活用します。集団活動で、例えば複数のお子さまで一つの作品を作るように分担し、お子さまにはさみで切る役割を与えます。指導員は様子を見守りながら、必要なときにフォローをおこないます。授業の中ではさみの使い方を実践しながら、集団で役割を果たすことの楽しさも学ぶことができます。

家庭での療育

お子さまが苦手意識のある活動でも、「もっとやりたい!」「できる!」とモチベーションをあげるためには、上手に道具や手先が扱えず作品や文字がうまく書けなかったとしてもお子さまが頑張っていることを褒めていくことがとても大切です。「失敗してしまった」という結果や気持ちがあると、練習する機会をつくることも難易度があがってしまいます。

当教室の療育をタブレットにてみていただき、指導員と同じ声掛けや提示をご自宅でも実施していくようお願いをしていきます。

例えば、1回はさみを握るだけで切り終わるパーツを組み合わせて完成する工作は達成感が得やすく、のりは塗るところに事前に色や数字を書くことでわかりやすくなります。テープには切りやすいように切り込みを入れ引っ張りさえすれば切れるようにしたり、扱いやすい大きさに事前に切っておき貼ることだけに集中できる環境に整えておくなどお子さまが楽しさを見つけられるステップから練習をおこない少しずつステップアップしていきます。

要点

保護者さまへのサポートでは、お子さまに合わせた具体的な接し方・声かけを学びます。 どんな切り方をしても失敗にはならないよう、それなりの形に作ることができ、その形を楽しめるような工作の課題を選ぶようにします。

お子さまが課題に前向きに取り組み、楽しみながら上達していける環境を整えることが重要です。

お子さまに合わせた手立ては、難易度の調整や、出来たという周りからの褒めなど様々なので一緒に見つけていきます。